そのパネライは多くのパネライファンの期待を背負って世に生まれ落ちました。
「PAM00590 8giorni brevettato luminor」
かつて伝説と呼ばれたPAM00203 ルミノール アンジェラスと同じ紋章を文字盤に受け継いだモデル。
ルミノールケースに限定刻印、デイトやクロノグラフなどの無駄な機能が搭載されていない。
人気が出るパネライの要素を全て兼ね備えておりました。
しかし2014年パネライ熱が最高潮に達しようというタイミング満を持して発売されたPAM00590。
唯一のパネライの誤算は客層に恵まれなかった事です。
2014年当時にパネライと言えばロレックスと比べても全く遜色ない資産性を兼ね備えておりました。
CEOボナーティ氏の語るように「流行らせすぎないブランド」としてパネライというブランドイメージを保つ戦略。
「ルミノール」「ラジオミール」という完成された機能美デザインにより他のブランドのファンのレベルでは到達し得ない愛を持った顧客を抱えていたパネライ。
話は変わりますがパネライとBMWは似ています。
レクサスが登場したときに乗り換えた方の多くがメルセデスベンツオーナーとトヨタオーナーであったと言います。
しかしBMWオーナーの多くはBMWを選んだと言います。
私も今は非常に理解出来ます。BMWのエンジン音や変わらぬデザイン。BMWの車体よりもBMWの提供してくれる「走りの質」が大好きなのだと思います。
ですのでBMWオーナーは次もBMWを買う確率が非常に高いと言います。
パネライも同じです。高い腕時計というステータスだけではなくパネライの持つ堅牢性、あの大きなケースを腕に巻きつけた時の満足感、可愛いのにワイルドという相反する2つの要素を持つ外見、こだわりの強い男性ほどパネライの虜になっていくのです。
2014年に北米限定1000本限定生産で登場したPAM00590 8DAYSGIORNI 当初は日本市場でも100万円近い値段で腕時計がやり取りされていました。
パネライのレアモデルは定価以上で取引されることもしばしばありまして、高いなぁと感じましたが異常というほどではありませんでした。
パネライで限定1000本といえば十分に定価以上で取引される価値はあります。
しかしながら2014年には北米限定だったはずのPAM00590が日本でも発売されることに、それも2000本というかなりの数の生産本数です。
結果的に1年でPAM00590のレアリティーは急激に減少してしまいました。
そしてその際にこの腕時計を所有していたのは転売屋と高額でPAM00590を買い取りした腕時計店でした。
日本での発売が決まってからは1ヶ月に2〜3万円づつ価格が下がっていたのを覚えております。資産価値が高かったが故にパネライ愛の無い人達がこぞってこのモデルを買い漁っていたのです。
当然相場が下がってくればリスク回避の為にどんどん捨て値で手放していきます。
こうして愛なきものたちに委ねられたパネライは見る見るうちに価格崩壊を起こしました。そして今年の夏のパネライの定価改定がトドメです。定価自体も10万円以上下落したために一時期100万円はあったPAM00590の販売価格は中古で50万円程度にまで下落しました。
2016年9月最安であれば50万円切るまで下落したPAM00590ですが、今まさに相場は底をうって上昇に転じております。
価格が下がりすぎて今度はパネライファンの方や、パネライを買おうとしていた人が買い始めたのです。
今月は楽天はヤフーオークション、腕時計屋さんのサイトを見ていますが合計で5〜6本ぐらいのPAM00590が売れています。
おそらく「この値段なら買ってもいい」という分岐点を超えたのだなぁと感じます。
こうなると強いのがパネライです。パネライの特徴の一つとして
「1年間で決まった数しか作らない」という定量生産という形を取っているため個体が無くなりはじめると途端に各社の在庫が枯渇していくのです。
やっと本来あるべきオーナーたちのもとへPAM00590が届けられているのです。
市場に翻弄されながら2年間で50万円近く相場が変動したPAM00590ですが、
・手巻き8日稼働の腕時計が50万円の時点でお買い得
・結局8GIORNI刻印の入っているパネライは少ないので人気が出るのはわかっていた。
・3針、44ルミノール、手巻きとパネリスティも納得のシンプルモデルである
・茶色いアンティーク夜光塗料が素敵
・下がりきっている相場なので逆に安定感がある
・待ってたらどんどんいい個体無くなる