ロイヤルオーク デュアルタイム 26120ST.OO.1220ST.01
オーデマピゲ
ロイヤルオーク デュアルタイム
Ref.26120ST.OO.1220ST.01
ケース直径 39mm
グランドタペストリーダイアル
搭載キャリバー cal.2329/2846
ジャガールクルトcal.889ベースカスタム
基礎スペックはこんなところでしょうか。
意外とネットなんかで検索しても文献はそこまで出てこないから驚きです。2006
年から作っているので販売数自体はかなりあるはずなのですが。
ともかくこのロイヤルオークデュアルタイム、
「好き嫌いがハッキリする腕時計」でして、
下地のロイヤルオーク自体が3針モデルが一番人気である事、
それからこういったコンプリケーション系フェイス(ぐちゃぐちゃ多機能なやつ)自体が好き嫌いがハッキリ別れますので、いわゆる万人受けウォッチでは無いですね。
周囲の腕時計ブランドの多機能ウォッチのフェイスをを見回してみても好き嫌いがハッキリするモデルが多いですね。
こういった画像をたくさんのせると、
「ゴチャゴチャしてて嫌だなぁ」
という声が聞こえてきそうです。
はい。もうゴチャゴチャ時計アレルギーの方は脱落ですね。
ロイヤルオークデュアルタイムは購入候補には上がらない訳です。
しかしその反面、こういったゴチャゴチャフェイスに物凄く惹かれる人もいるのが事実でしてそういった人の為に今回は書いていこうと思います。
多機能ウォッチに見るウォッチメーカーの実力
数多くの腕時計メーカーが多機能モデルウォッチを販売していますね。
基本的に多機能ウォッチの実力は私個人としては「薄さ」だと思っております。
デュアルタイムと名の付く時計はかなりありますが、よくよく手にとってみると異様に厚さがある事があります。
多機能という事は普通の3針時計以上に歯車やプレートパーツをムーブメントに搭載することになり基本的に厚くなります。
さらに言えば多機能モデルは文字盤上に配置される針の数も増えます。
そして当然ながらその針同士が重ならない様に組み上げ工程で針をセッティングしますので、文字盤から風防にかけての距離も伸びていきます。
ですから多機能ウォッチとは、
「文字盤から見て上方向にも下方向にも厚くなりやすい」
という事が言えるのであります。
そして雲上メーカーをはじめとした高額な多機能ウォッチは漏れなく薄くできております。
しかしどの会社も薄型の多機能ウォッチのムーブメントを昔から作れた訳ではありません。それは世界3大メーカーも例外ではありません。
その影には多機能ウォッチのベースとなる機械を開発し続けて来たメーカーの存在があります。
そう。現代の多機能ウォッチの礎を影から作ってきたのは「ジャガールクルト」のムーブメントなのです。
いつも影にはジャガールクルト
今まで開発した自社ムーブメントは1,000以上。
機械を開発するという分野ではこのメーカーに匹敵する腕時計メーカーはおそらく無いでしょう。
パテックフィリップ、オーデマピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンも2,000年代以前の複雑系ムーブメントには多くのジャガールクルトムーブメントが使われております。
特にオーデマピゲとジャガールクルトという2つのメーカーはジャガールクルトが2,000年にリシュモングループに加入した後も交流が続いていますね。
ですのでオーデマピゲの腕時計のベースムーブメントにジャガールクルトが使われる事は非常に多いです。
そしてここで本筋に戻りますが、今日ご紹介のロイヤルオークデュアルタイム26120STのムーブメントもベースはジャガールクルトの「cal.889」が使われているのです。
この「cal.889」の薄さは3.25mmでして、その上にオーデマピゲがモジュールを追加したりカスタムを施してcal.2329/2846としてロイヤルオークデュアルタイム26120STに搭載しているのですね。
これを完全自社製造にて作ってしまうと、ロイヤルオークデュアルタイムの定価2,376,000円という良心的定価が実現できないわけです。
ジャガールクルトから供給されるムーブメントを上手くとりいれることによりロイヤルオークという優秀のベースモデルの厚さをそのままに多機能なムーブメントを載せても2,376,000円程度の値段で済ませられているのですね。
ここで言いたいのは、ロイヤルオーク デュアルタイム 26120STという腕時計はジャガールクルトムーブメントの縁の下の力持ちのお陰で、
「雲上ブランドの多機能ウォッチとしては非常にコスパが良い割安な腕時計」
ということなのです。
中古品の販売相場で言えば、3針のロイヤルオークである15300STと15400STと比べても10〜20万円程度の差で多機能モデルにランクアップできるのでロイヤルオークの3針ではシンプルで物足りないという方はデュアルタイムという選択肢もアリかと思います。
さてここまではロイヤルオーク デュアルタイム 26120STがロイヤルオークのケースに薄型のジャガールクルトムーブメントを採用したことでコストを抑え、厚さそのままに多機能ウォッチをオーデマピゲがお手頃値段で提供している。ということを書いてきました。
次のページではしっかりと多機能ウォッチのデメリットについても書いていきたいと思います。
多機能モデルの弊害
さて機能に対してのコスパは抜群のロイヤルオーク デュアルタイム 26120STですが、勿論多機能モデル故の弊害もあります。
某AP日本販売本数No1店舗の店員さんもおっしゃいますし、身近なAPコレクターの方も一様に同様の事をお話になることですが、
「オーデマのデュアルタイムはオーバーホール時期が異様に早く来る」
という事です。
確かによくよくスペックを見てみると、
「パワーリザーブ38時間」
と現代の腕時計とは思えないほどの短いパワーリザーブ。
現代の腕時計であれば及第点として48時間パワーリザーブ、自社ムーブメントが増えた現代では70時間パワーリザーブすら珍しくないですね。
38時間パワーリザーブはさすがに短いと言わざるを得ません。
そしてこのロイヤルオークデュアルタイムよくよく見ると7針であります。
ゼンマイから送られる動力で常に7つの針を動かし続けるということでムーブメント自体の故障要因を増やしていることは間違いありませんね。
3針の腕時計と比べると仕方のない事ですが、複雑な機構の腕時計を使用するという事はオーバーホール時期の短期化と故障のリスクを増大させる事と同義です。
機能に対してはコスパの良いロイヤルオーク デュアルタイム 26120STですが、その反面ムーブメントにかける負担は極大であり、故障のリスクもあるという事をオーナーは理解して使用する必要がありますね。
ロイヤルオーク デュアルタイム 26120ST まとめ
ジャガールクルトムーブメントcal.889をベースに採用したことで、
・多機能ながら厚さの増加は15300ST 9.4mmから0.9mm増加の「10.3mm」程度に抑えられている。
・ここまで多機能なロイヤルオークなのに2,376,000円というお値打ち定価設定
・でも故障のリスクもあるからご注意ですよ
という内容でした。
比べちゃいけませんがパテック・フィリップのノーチラスプチコンプリケーション5712/1Aの定価が4,039,200円であることを考えると、やはり複雑フェイスの腕時計としては割安に感じてしまいますね。
特に完全自社開発ムーブメントと厚さにこだわりが無ければこのロイヤルオーク デュアルタイム 26120STという選択肢もアリだと思います。
白、黒、短期間だが青文字盤も存在していた26120ST、私個人的には白と青が好きですが、文字盤のバリエーションも選べますし、先程故障のリスクを述べましたが、それ以上に複数本の針が交差する様子は圧巻です。
3針時計には無い針の共演による表情を見せてくれるロイヤルオーク デュアルタイム 26120ST、雲上時計の複雑フェイスの購入を検討されている方はこの腕時計からスタートしてみるのもイイかもしれませんね。
それでは本日はこのあたりで失礼いたします。