かつて日本の首相でトランジスタラジオを持って外交した政治家は異端児的な目で見られてきました。
しかし現在のグローバル企業のトップが先頭に立ち、自社製品を積極的に売り込む姿は自然で、新作の発表会を担当役員に丸投げする企業は皆無と言っていいでしょう。
1980年に入ってから偉大な功績を挙げた、時計界のカリスマ経営者の筆頭は『ニコラス・G・ハイエック氏』を私は一番に挙げます。
1928年レバノン生まれの彼は後にスイスに移住、エンジニアを経て起業、コンサルタントの世界に進出しました。
彼の優れた点は、業界の常識に囚われない手法とトップダウンの指示の中にも現場の人間の自尊心や魂をくすぐるプラスアルファを加味する事が特徴です。
1993年にコーアクシャルエスケープメントに出会いを採用した時もハイエックが思い描いた事は、従来の常識以上に耐久性の高い機械式時計を完成させる事でした。
コアークシャル採用後、さらなる耐久性を求め今度は部下から提案のあった耐磁性のある時計の製作にゴーサインを出します。
コーアクシャルで道筋を作り、それに共感する部下の自発的なモチベーションアップを生む土壌を作る事は経営トップの鏡と言えます。
ご存知の通りハードワーカーだった彼は2010年の職務室で世を去ります。
でも僕はその時も彼は常に先を見ていたと思われます。
息子に経営の全権を継承、会長職になりその後の死去でした。
そのため彼が亡くなった後もスウォッチグループは混乱も無く、更に発展しています。
スムーズな経営の継承があったからグループは一枚岩で、現在も時計業界の先頭を突き進んでいるのでしょう。
機械式時計ファンの多くが知るハンス・ウィルスドルフ、Rolex社の創業者です。
彼が1905年に企業した時まだ24歳でしたが、若かったからこそ1960年代にはサブマリーナやGMTマスターといった不久の名作を世に送り出せたのでしょう。
当時懐中時計が主流だった時代に腕時計の時代が来ると予想、そのため時計の防水機能の向上が不可欠と考えました。
彼の当時の常識の囚われない考えが、防水性の高い腕時計ケース、リューズの開発につながったのです。
また宣伝を巧みに使う事でブランドイメージを高めた天才でもあります。
現在のタグホイヤーCEOであるビバー氏はかつてはオメガでハイエック氏と上司の部下の関係にありました。
おそらくそこでハイエック氏の教えを受けたのでしょうか。
ビバーはオメガに転身後、そこでキャリアを重ねて後にHUBLOT(ウブロ)へ転身します。
その後のウブロの成功はご存知の通りです。
彼の仕事の特徴も常識にとらわれない、しかしマーケティングや品質の向上は怠らない事です。
今日紹介した3人はいずれも時計界の歴史では重要な役割を果たした3人で、共通のワードは「常識にとらわれない、でも品質の良い事には拘る」事です。
彼等3人はクオーツムーブメントより機械式ムーブメントに時計界の未来があるとした点も評価できます。
クオーツがだめという訳では無く、『機械式時計は半永久的に使える』。
このことに魅力を感じ、マーケティングを進めた事が彼等の功績からわかります。
ジャンクロード・ビバー以外は世を去りましたが、彼等の魂が宿った時計はトケマーでも見られます。
彼等3人がもし居なかったらどんなに機械式時計はつまらない物になっていたか、いくつかのブランドは消滅していたかもしれません。
トケマーで彼等の姿や功績を思い浮かべて買うのも楽しいではないでしょうか?