マニュファクチュールとエタブリスールとは
腕時計が好きになり色々な知識がついてくると、キャリバーという単語を目にする機会が増えてくるかと思います。
腕時計を動かす心臓部ともいえる部分であり、それではムーブメントとは違うのか?
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?
雑誌やほかの媒体でも同じ意味で使われているところも散見されます。
ではもったいぶらずに答えから出しますと、ムーブメントが大きな括りで存在して、そのムーブメントの製造メーカーが管理のために種類別に型番を付けたものがキャリバーです。
なので本質的には同じ意味ですね。細かな違いや、ブランドごとの機能特性の違いはキャリバーごとに存在するという事です。
キャリバーとはムーブメントの種類を強調する言い方だと思ってください。
上記のカリブルドゥカルティエ(人気ですよね)という時計の名前もそのまんま意訳すると、カルティエのキャリバー!という感じになります。
簡単に解説しておくと、カルティエが自社工房で設計・開発・製造を手がけた自動巻きメカニカルムーブメント“Cal.1904-PS MC”を搭載した腕時計です。
因みにCalというのがキャリバーを意味する単語なのでこちらも覚えておくといいでしょう。
それでは何故時計の名前にするほどキャリバーに強いこだわりがあるのでしょうか?
それを紐解く知識として マニュファクチュール と エタブリスール という単語が出てきます。
マニュファクチュールは時計好きのみなさんには周知の知識かと思いますが、エタブリスールはどうでしょうか?
マニュファクチュールとは一貫した自社製造生産、という意味です。
ではエタブリスールは?それ以外の主には外装やデザインのみを自社で行い、中のムーブメントは他社製品を使用しているブランドの事を指します。
またマニュファクチュールを厳密に定義すると、ケースやムーブメントはもちろんネジ1本1本に至るまで全て自社で製造しているという事になります。そのため、マニュファクチュールのブランドの方が単純に高額です。
しかし、ここまで厳密に定義する場合は少なく、実際は「外装のデザインだけでなくムーブメントも自社で製造している」という意味で使うことが一般的です。
それを踏まえると先に挙げた、カリブルドゥカルティエという時計の名前にも納得がいくのではないでしょうか?
ムーブメントをも開発、生産したのだという事は腕時計ブランドの格付けにおいても大きく意味を成す要因の一つだという訳です。
エタブリスール
それではエタブリスールについて。これは自社の力だけで時計作りをするのではなく、ムーブメントや部品を他メーカーから仕入れて組み立てるという製造スタイルを指します。
価格はその分マニュファクチュールよりも抑え目です。(のちに主だったブランドを挙げていきます)
ですが、スイスの時計業界では元々この分業≒エスタブリースが基本でしたので、決してエスタブリースの時計が良くない、質で劣るということはありません。
有名どころでは、オメガやタグホイヤーなどもエタブリスールです。
というよりも一部のマニュファクチュール以外のブランドが全てエタブリスールである、と言えるのですが。
マニュファクチュール ブランド例
パテック・フィリップ
バシュロン・コンスタンタン
オーデマピゲ
ジャガールクルト
ゼニス
ジラールペルゴ
グラスヒュッテオリジナル
パルミジャーニ・フルリエ
ショパール
パネライ
ランゲ&ゾーネ
ロレックス
セイコー
シチズン
余談ですが、マニュファクチュールの中でもパーツによっては一部を外部からの仕入れで行うブランドがほとんどです。特に基幹部品であるヒゲゼンマイの製造には極めて高度な技術力を要するため、ほとんどのマニュファクチュールでも自社製造が出来ていないのが実情です。
そんな中、ネジの一本からヒゲゼンマイまで完全に自社一貫生産品と言える、『完全なマニュファクチュール』は世界でもセイコーの一社のみです。
日本のブランドで完全なマニュファクチュールが存在するのはなんだか誇らしいですね!
完全なマニュファクチュール セイコー
上記のグランドセイコーはブランドコンセプトとして「最高の普通」、「実用時計の最高峰」を掲げています。
そのシンプルな外見とは裏腹に世界最高峰の技術が惜しみなく使われています。
グランドセイコーのムーブメントと言えばセイコー独自の技術、スプリングドライブが有名ですね。
自動巻き、クォーツ(電池式)に次ぐ第三の動力ですがこれも世界でセイコーのみがもつ技術です。
まとめ
ムーブメント≒キャリバーからマニュファクチュール≠エタブリスールまでのざっくりとした解説をさせていただきましたがいかがでしたしょうか?
自分はすでにマニュファクチュール、エタブリスールという単語がゲシュタルト崩壊してきましたので、皆さんの脳裏にもしっかり焼きついた事と思います。
他にもムーブメントの供給会社として有名なETA社や、ヒゲゼンマイの供給会社としてスイスでは長いこと独占状態が続いているニヴァロックス社というメーカーなど知識はどんどん深く広がっていきます。
次の機会には、上記のような腕時計部品の製造メーカーに関しても解説を入れたいと思います。
腕時計は知れば知るほど、知識が入れば入るほど様々な視点からその価値を見出すことのできる大変趣深い趣味だと個人的には思います。
是非様々な視点からこれからの時計選びにその知識を活かしていただければ幸いです。