昔の時計雑誌を読み返す企画、今回もおなじみの「時計Begin」からVol.4を中心に書いていこうと思う。
「時計Begin」と言っても、当時はまだ、本誌Beginの臨時増刊号扱いで、名前も「おいしい時計まるかじり Vol.4」となってはいるが。
今回のそれは1994年12月のもので、この年はF1パイロットのアイルトン・セナが事故死した年でもあり、また年が明けて1月には阪神淡路大震災が発生している。
22年も経つのか。
さて雑誌の方に目を移すと、今回の特集は「おいしい時計グランプリ」
各部門に時計を分けてそれぞれで賞を決めるというもの。これは今でも時計Beginで続いている名物企画である。
せっかくなので今回はこの年にどんな部門でどの時計が受賞したのか振り返っていきたいと思う。
ジラール・ペルゴのGPフラットが受賞
間違いなくスーツに合いそうな一本。当時の価格はSSケースで27万円となっており、買える、買えないは別として、今となってはお手頃感が漂う。この質感でこの値段は、今となってはもう無理だと思う。
オメガ デ・ビル プレステージ・クロノグラフが受賞
今でも続くロングセラーモデル。飽きのこないシンプルなデザインはレザーストラップが似合うので、こちらもスーツの方が映えるか。
ただ、ノミネートにあったゼニスのプライムが個人的にはツボである。アラビア数字が好きなので、見ていてとても欲しくなってくる。
ポルシェ・デザイン オーシャン2000が受賞
この頃のポルシェ・デザインは、服装などオシャレに気をつかう人たちがよくつけていた。文字盤にある「by IWC」のロゴも実にかっこよいではないか。
マーヴィン カレ・スティールが受賞
派手さはないものの、歴史もあり、日本では知る人ぞ知るブランド、マーヴィン。現在の取扱店を見ても、いわゆるしっかりとした時計店ばかりである。それをグランプリにもってくるあたりがなかなか憎い。
カルティエ トノー
トノーという言葉も、この少し前あたりくらいから聞かれだした言葉で、この後完全に定番と化していくことになる。代表的なのは、やはりフランク・ミュラーか。
ブライトリング ナビタイマー・エアボーン
パイロットというと、やはりブライトリングやIWCのイメージが強い。
個人的には自らが所有していることもあり、ノミネートされていたIWCのメカニカルフリーガークロノが好みではあるが。どちらもアラビア数字。
ユリス・ナルダン プラネタリウム・コペルニクス
このあたりになってくると少し現実離れしてきて、腕時計と呼んでいいのかどうか分からない世界に入っていくことになる。ノミネートされていたブランパンの1735は誌面では価格未定となっていたが、後に9000万円の値がつけられ受注生産されていたと思う。
ほかにもあるが、あまりにもマニアックなので、このあたりにしておこう。
この号でも、ジラール・ペルゴの特集が組まれていて、なかなかに購買意欲をそそるものが目白押しだ。
実際こういった記事を目にすることで、色々なブランドに食指が動く人もいるのではないか。ロレックスだとモデル数も少ないし「人と同じなのは嫌だ」なんて考えだしたユーザーは、もしかしたらまだ知人で誰も身につけていないようなブランドに思いがいくかもしれない。
そういったブランドとしてIWCやブライトリング、ジラール・ペルゴなどは少なくともこの頃に時計に興味を持ち始めた我々の世代では受け入れられてきたように思う。
時計をグランプリ形式で紹介していくことで、ロレックス以外にも魅力的な時計がスイスにはたくさんあるということを知った読者も、この頃には多くいたのではないだろうか。
また逆にロレックスがほとんどノミネートにすら入っていないことに、違和感を覚えた人も多かったかもしれない。
ただこのようなロレックス以外のブランド時計は、地元に昔からある大きな専門店や百貨店の時計サロンに行けば、当時でも実際に見ることはできた。
一般的にはまだまだマイナーな趣味だったかもしれないが、確実に時計ファンは増えていったのである。