1957年と言えば、終戦から12年が経ち、世界は冷戦時代に突入していました。
ロケット(ミサイル)の技術競争が宇宙開発競争に変わりはじめたのもこの頃です。
オメガ社は当初、モデル名からも読み取れるようにカーレースドライバーや航空機パイロット、時間の計測が必須なエンジニアなどへ向けた腕時計として「スピードマスター」を開発したと思われます。
シーマスター300やレイルマスターと同年に製造が開始されていることから、
オメガの「スポーツククロノグラフ」としてのカテゴリーとして
ホイヤー社やロレックス社に対抗して作られたのでしょう。
スピードマスター・ファーストモデル「CK2915」
独特のアローハンドがかっこいいです。名機キャリバー321を搭載しています。
1962年マーキュリー6号に搭乗したジョン・グレン宇宙飛行士の腕にはホイヤー社のクロノグラフがありました。
腕時計ではなくバンドに固定されたクロノグラフです。
NASAではジェミニ計画(マーキュリー計画の次)の宇宙飛行士に装備させる「ミッション・ウォッチ」を探していました。
あらゆる過酷な状況を仮定しテストを繰り返し選ばれたのがオメガのスピードマスター・セカンドモデルでした。
NASAの規格では「手巻き」機能が必須で、手巻きのクロノグラフでも、自動巻きでもどちらでも良かったようです。
無重力下では自動巻きの振り子が不完全な動きをするため、「手巻き巻き上げ機能」が付いていなければいけなかったのですね。
最後のマーキュリー計画時にゴードン・クーパー宇宙飛行士が装備していたスピードマスター「CK2998」。
ファーストモデルの短針の三角形(アロー)を取り視認性が上がっています。
ケースサイズも40mmに上がっています(CK2915は39mm)。
65年NASAの正式採用になったモデルはスピードマスター・サードモデル「ST105.003」です。
更に視認性が上がっています。
キャリバーは同じくCal.321が搭載されています。
1965年ジェミニ4号が無事打ち上げられ、アメリカ初の「宇宙遊泳」が行われます。
エドワード・ホワイト宇宙飛行士の腕にはスピードマスターが外装もなく剥き出しで着けられていました。
強烈な紫外線にも負けず、無酸素・無重力・極高低温にも負けなかったスピードマスターは正確に時を測ります。
66年には「プロフェッショナル」の文字が文字盤に刻まれます。
またリューズやプッシュボタン周りにガードが付けられ、より堅牢になったフォースモデル「ST105.012」。
※ケースデザインが変わった4thモデルは3rdモデルと同時期に並行して販売されていました。
1969年 アポロ11号(着陸船イーグル)が月面着陸を成功させ、人類が初めて月に降り立ちます。
ニール・アームストロング船長と共に月面に降り立ったエドウィン・オルドリン宇宙飛行士の腕にはやはりスピードマスター(プロフェッショナル)が着けられていました。
※アームストロング船長は時計を外していたそうです(スピードマスターは支給されています)。
1968年には次世代キャリバー861が開発されていました。
低コスト量産化・スペック面でも向上したキャリバーだったのですが、もう1度NASAのテストを受けねばならずNASAもキャリバー321で充分に満足していたようで、しばらく採用には至りませんでした。
第1部はこちらで終了です。
いかがだったでしょうか?
ムーンウォッチとは「初めて月に行った腕時計」と言う賞賛の意を込めた愛称です。
パテックフィリップでもロレックスでも成し遂げられなかった偉業をスピードマスターは行ってきました。
今でもデザインを大きく変えず、スピードマスター・プロフェッショナルは作り続けられています。