前回は時計Beginの創刊号を読み返して記事を書いてみたが、手元にVol.2が見当たらないので、今回はVol.3を読み返しつつ、当時のことを思い出してまた好きなように書いていこうかなと思う。
なお、Vol.3以降は最新号に至るまで手元ですべての存在が確認できたので、以降は抜けることはないかと思う。
ここで気付いたのが、当時はまだ「時計Begin」ではなく、「おいしい時計まるかじり」という名称を用いていたようだ。
ポストロレックスの行方は・・・
さて、Vol.3の特集は「ボーナスで買う!使って安心の最新モデル 新作時計一番搾り 厳選72」
時は1994年、依然としてロレックスの人気は圧倒的なものとはいえ(これは現在でも変わらないか)ポストロレックスの開拓へと各雑誌も色々と特集を組み、腕時計人気の裾野を広げるのに頑張っていた時代と言える。
個人的な感覚としては、時計に興味を持った人がとりあえず一本目にロレックスを購入し、さて二本目どうするかといったときに、ロレックス以外にも高級な腕時計というのは色々あるのだなと気付き始めたのがこれくらいの時期だったように思う。もちろん、当時から時計マニアの方はいたわけではあるが。
ポストロレックスとして、この時期よく取り上げられていたのが、IWCやブライトリングやジラールペルゴといったブランド。
オメガやホイヤーは少なくとも当時は幾分か価格帯もロレックスに比べ低く、また時計に興味のない人でも、結納返し等に選ばれることも多かったようで、わりと知名度は高かったように思う。

Seamaster ChronoDiver ST378.0504
価格的にも悩ましい・・・
ブライトリングやIWC、ジラールペルゴといったブランドは、ロレックスと価格帯が同じくらいだったので、購入するときにはかなり悩む人もいたのではないだろうか。
ましてや一本目の高級腕時計となると誰もが知っているロレックスを差し置いて、これらをチョイスするのはなかなか勇気のいる選択であっただろう。
実際にこのVol.3においても特集が組まれているブランドに、ジラールペルゴ、エベル、ブライトリングがあったが、当時は特にかなり時計が好きな人しか知らなかったかもしれない。
ジラールペルゴでは、シーホークⅡ、トノークロノグラフ、GP7500クロノグラフといった、とても洗練されたデザインのモデルが紹介されているが、実際に当時はどれくらい売れたのだろう。
街中でつけている人をみたことはあまりないが、実物はどれも本当によくできていて素晴らしかった。
「エベル旋風の予感」と銘打って特集されたスポーツウェーブラインや1911シリーズもとても魅力的だ。
ブライトリングは当時から航空ショーとタイアップして各界の著名人を招き、ド派手なイベントを開催し着実にファンを増やしていった。
ブライトリングの時計は、腕時計に興味のない人が見ても、とにかく男らしくてかっこいい、そして、いい意味で分かりやすい。
当時からクロノグラフのラインナップが多いが、時計に興味のない人でも、あのメカメカしい文字盤を見れば、かっこいいと思うのではないだろうか。
選択の行方は・・・
今は色々な情報が得られるので、それぞれのブランドの立ち位置というものを自分の中で作り上げていくことができると思うけど、当時はそれほど情報があったわけではない。
聞いたことのないブランドの時計に、何十万もの大金を払うのは普通の感覚だとはっきりいって怖い。
そういう意味では、雑誌などで特集が組まれていたり、詳細なブランドレポートなどがなされていたりすると、それはそれで未知なるブランドの発見みたいな感じで好みの幅も広がってくるというものだろう。
もちろんロレックスが悪いというわけではなく、今でも抜群の認知度と人気を誇るロレックスから腕時計の世界に入り、そこから色々なブランドに興味が広がったという人は少なくないと思う。
またこの頃はアンティーク時計も積極的に紹介されていて、幅広い層に向けた情報が発信されていることは創刊号からの流れのままといえよう。
当時の時計業界では・・・
ところで、この号で私の興味を一番惹いたのが「覆面座談会」の記事。時計業界に造詣の深いコメンテーターの方々が、匿名で色々と暴露しているのである。
少し紹介すると、当時の現行ロレックスの並行品のあまりの安さに怒ったロレックス本社が値上げを決めたとか、1019ミルガウスの在庫がまだあった時代なので、見つけ次第必ず買っとけ・・・とか。
当時何度もデッドストックに遭遇していたのに、悔しい限り。
またアンティーク編では新たに作った文字盤をタバコの煙で燻して風合いを出すとか。そうすることでレアなモデルを作り出す専門の職人がいたらしい。
今でもその時のモデルが出回っているのだろうか。
ショップ編に至っては、やばいショップの見分け方なんかがかなり詳細に書かれている。アンティークなんて素人には判断できないので、当時は参考になっただろうけど、今となってはこの頃から続いているショップであればそれだけでかなり信頼できるお店になっているのではないだろうか。
なにせ20年以上も前の話なのだから。
面白い広告に、ジャックロードの開店7周年というのがあって、なんとノンデイトのサブマリーナが限定7本77,777円というものがあった。
これかなりの競争率だったと思うけど、運よく手に入れられた人はかなりラッキーだろうな。
まとめ
この頃の雑誌を見てみると、意外とポストロレックスの発掘に熱心だったように思う。
この後もこのトレンドは続くのだけれど、昨今の状況をみても相変わらずロレックスの人気は圧倒的なわけで、そのブランド力の凄さに改めて驚かされる。
とはいえ、ロレックス以外にもこんなに色々なブランドの時計があることを知った人はたくさんいるはずで、一本目にロレックスを買った人でも、そのうちの何パーセントかは次の時計へいくわけだから、当時においてその果たした役割は大きかったのだ。
当時の雑誌を振り返ることで様々なことが見えてくる。今後も見返していきたいと思う。