遠目から感じるプロスペックスの存在感

@goro
遠くに見えるのが、大阪市北区、通称梅田です。
話は逸れますが、2019年10月より阪急、阪神の駅名が「大阪梅田」に統一されます。
これまで、梅田界隈で聞かれることと言えば、「すみません、梅田はどこですか?」と【JR大阪駅前】で訊ねられることでした。
これによって、そんな【梅田迷子】も減ることでしょう。
この駅名の改称は関西人からも概ね、好評です。
これで観光でいらっしゃる方達も歩きやすくなるでしょう。
そんな大阪市の繁華街をいつものように、この記事を書くためスタバに立ち寄りキーボードを叩き終了しました。
その後、なんとなくブラブラしていたところで偶然、目に飛び込んできたのがプロスペックスだったのです。この腕時計に存在感を感じた瞬間でした。
SEIKOから感じる「本気」
売場の雰囲気を見ても、SEIKOの「本気」を感じ取れました。
また腕時計自体が放つ、「存在感」がひしひしと僕へ伝わってきました。
SEIKOの世界へ向けた「挑戦状」は、本気です。
その要因は腕時計のデザインを優先したことにあります。
SEIKOのHPではインダストリアルデザインのアドバイザー奥山氏が、熱き思いを語っています。
Seiko Prospex LX line PV 2019【full】
このPVも英語での発信。これまで日本のメーカーの日本版では考えられないページ構成です。
世界をマーケットにしていることを日本の消費者にもアピールしています。
つまりブランド力を発信しているのです。
これまで、日本の工業製品のデザイナーは日影の存在でした。プロダクツの主役は製造エンジニア、腕時計では精度や防水機能が優先事項です。
そのためデザインは二の次、社内デザイナーを使って無難に安く仕上げる手法が大半でした。たまに外部の優秀なデザイナーを登用しても、経費節減で長続しないことも多くありました。
SEIKOは今回外部デザイナーとして奥山清行氏の事務所と契約を結んでいます。
奥山氏はこれまでカーデザイナーとしてフェラーリのデザインも担当した実績がある人物です。
また変わり種としては大阪メトロ(地下鉄)のチーフデザインオフィサーにも任命されています。
それで最近大阪メトロの構内もスッキリしているんですね。
さて、動画のスピーチを聞いたところで最新のモデルを見てみましょう。
最高峰LX LineのひとつであるSBDB027は1968年のheritage(ヘリテージ)モデルです。基本デザインを継承し、ディテールを改良してより存在感を輝かせることをコンセプトにしているようです。
この動画でわかるように、SEIKOは明らかにデザインをプライオリティに(優先)していることが感じます。
世界、いやスイス時計業界へ本気で、挑戦状を叩き付けたのです。
以前にTV番組で言っていたことを、本当に実行した行動力に拍手です。
デザインの大切さを日本の製造業に浸透させる、意気込みが伝わる
これまでのSEIKOの腕時計のウィークポイントは「さえないデザイン」でした。
さえないから皆腕時計はスイス製を購入する。それでもデザインはそのまま。
無難と言えば聞こえは良いですが、ワクワクする雰囲気が腕時計から出てこないのです。
しかしこのトケマーに出品されていたプロスペックス マリーンマスター SBDX021あたりから、そんな野暮ったさが少しづつ消えていきます。
この2018年に発売されたプロスペックスもサブマリーナとは一味違う、雰囲気が特徴です。
そしてデザインに一貫性が出てきたことで、腕時計に良い雰囲気が出てきています。
ベゼル周囲はサブマリーナに少し似ています。しかし文字盤を心もち小振りにしていることが、特徴です。
色にもこだわっています。かつてSEIKOの腕時計は黒のみでした。
しかし濃いグリーンを採用し、それは屋久島の緑をイメージしたとか。このように地球環境を考えるモデルは世界戦略を考える上では大切です。
あえてサブマリーナ116610LVを載せました。似ているという意見も当然あるでしょう。
しかし僕はSEIKOがデザインを優先させて、宣言通りにその責任者を広告の前線に出した、彼らの実行力にただただ感激しました。
有言実行やアピールは日本の企業が最も苦手にするところです。
これまではこのような宣言は某自動車会社のように単なる打上げ花火で終わることがほとんどでした。
しかし、SEIKOの【本気】さは小売の最前線と消費者である僕の目にも、しっかり伝わってきたことに脱帽です。
国内で無風状態でいたため世界から置いていかれた
性能や価格は申し分ない、でも腕時計はやはりファッショ性が面白くないと付ける気になりませんよね?
以前妻も「SEIKOの時計ってオジさんクサイよね」とよく言ってました。
SEIKOは国産腕時計ブランドの雄として、その地位に甘んじていたことは事実です。
例えば南極越冬隊用の支給品腕時計に関してもNASAのように、世界中から競走入札を受けていれば、向上するための努力を重ねていたでしょう。
オメガのスピードマスターのように。
しかし1960年代は日本ではおそらく入札競争はほとんど皆無。あってもCITIZENくらいとの競走でブルーオーシャン状態で採用されていたのでしょうね。
このように国内へ力を入れると、デザインが後回しになるのは自然です。
華美なものを嫌う日本の工業界に足並みを揃えるのは国内向けの流れ。
そして、そんな日本工業界の衰退を海外でも見てきた僕はこのような流れを正直ウンザリして見ていました。
しがらみや伝統からの解放と取捨選択
そんな私個人の想いを大きく裏切る今回のプロスペックスは見事としか言いようがありません。遠めから見ても、惹かれる腕時計は本物でしょう。
良くも悪くも、SEIKOという会社はクラフトマンシップ色が強い会社だったと思います。
高い技術を持った職人さんが多く優れた技術を持っている。
しかし、近代工業ではそれだけでは必ず限界が出てきます。
消費者から愛させる製品づくりはデザインが良くないと結局、成功しません。
デザインと技術の融合こそが現代のインダストリアルプロダクツの目指すところでしょう。
SEIKOはクオーツという、画期的ムーブメントを腕時計に採用し、そのことで時計の大衆化に大きく貢献したことは間違いありません。
しかし、良くも悪くもこのクオーツこそ、SEIKOにとってアキレス腱となるのです。
これは私の勝手な想像ですが、デザイン部隊の脚を引っ張る「抵抗勢力」は、かつての「クオーツ成功体験者たち」である可能性が高いと思います。
抵抗勢力は間違いなく、社内での地位は高いはず。成果が無ければ、「ほら見たことか!」とかつての体制に戻そうと試みる可能性があります。
彼らに負けないで、デザイン部隊は素晴らしい腕時計を世に送り出して欲しいです。