BRANDから探す
BRANDから探す

SEIKO / セイコーの記事一覧へ


異端の「9」 セイコー キネティック クロノグラフ 9T82 実機レビュー GSではない9 <時計怪獣 WatchMonster 2017/3 掲載記事>

2017/3/16



セイコーのキャリパーナンバー(機械型式)で頭に「9」と言えばグランドセイコー専用の特別な番号です。しかしグランドセイコー以外に一機種だけ「9」を名乗ることを許された特別な機械がありました。それがキネティッククロノグラフCal.9T82です。 この特別な機械を実機レビュー付きでご紹介します。


異例-セイコーのムーブメント型番ルール破り

こんにちは。本題の前に少し豆知識を。セイコーのムーブメントの型番の四桁は上二桁がムーブメントのシリーズ、下二桁がバリエーションになります。
かつては四桁全てが数字でしたが、1980年前後に改訂されて「二桁目が英字、それ以外は数字」になりました。
そのうち一桁目が1~3はレディス用小型ムーブメント、4は共用小型薄型機、5~8がメンズ用でそのうち5と7はセイコーエプソン製、6と8はセイコーインスツル製を表しています。そして「9」はグランドセイコー専用、と言うのが基本ルールです。
しかし一機種だけグランドセイコーに積まれていないにもかかわらず「9」を冠することを許されたムーブメントがかつて存在しました。キネティッククロノグラフ「9T82」です。
セイコー アークチュラSLQ003

セイコー アークチュラSLQ003



9T82の誕生

異端の「9」、グランドセイコークォーツ用9F系ムーブメントと同じ「9」を冠するクォーツムーブメントは1998年にバーゼルフェアで発表されました。当時のセイコーエプソンの時計技術の粋を集め、一切の躊躇なく9Fと同じ機構を使用するフラッグシップとして設計された怪物です。
9Fの特徴である「3軸独立ガイド」と「瞬間日送り機構」と「バックラッシュオートアジャスト」が採用されました。細かいところでは正確な時間あわせのために竜頭を一回転させたときの分針の送り量(約20~25分)と言う部分もGSと同じです。
クロノグラフ機構もコラムホイールを使用し、ハートカムによる瞬間リセット機構を搭載しています。カムリセット式のクォーツクロノグラフは数社が出していますが、この形式は消費電力量が大きくなり電池への負荷が大きいと言う難点を抱えています。
そのため一次電池(充電出来ない通常の電池)でこの機構を採用したのはジャガールクルトとIWCが共同開発した「メカクォーツ」とフレデリック・ピゲのCal.1270です。
セイコーはこの電池寿命の問題を自動巻発電機構キネティックの採用で解決しようとしました。
発電機構との組み合わせで消費電力の大きい機構を搭載可能にする、と言う考え方はシチズンが2004年に光発電機構エコ・ドライブを採用したカムリセット式クロノグラフE210系を発表している事と合わせて考えるとほぼ正解に近い考え方であったと思われます。
シチズン E210系エコドライブクロノグラフ

シチズン E210系エコドライブクロノグラフ

また、ETA社もCal.206.211と言う自動巻発電クォーツクロノグラフを出しています。ペースムーブメントに機械式クロノグラフモジュールを搭載した構造のため、高コストだったためか採用例はエルメスNOMADの一例のみとなっています。


シースルーバックからの眺め

9T82は「9F」と「キネティック」と「機械式クロノグラフ」の技術要素を融合させた非常に複雑な設計のため、パーツ総数が340にも及びます。これは自動巻機械式クロノグラフとほぼ同じです。
残念ながらシースルーバックからは自動巻ローターと受け板しか見えず、コラムホイールも見ることが出来ません。見応えが有るとは言いがたい眺めですが、1モデル以外は全モデルシースルーバックです。
シースルーバックからの眺め

シースルーバックからの眺め

ガラスが皮膚に張り付く感覚を避けた着用感重視で非シースルーバックをメインにしても良かったのではと思います。

操作感など

さて、肝心のクロノグラフボタンの押し心地ですが、コラムホイール=柔らかく繊細な押し心地という期待をしていると違和感を覚えます。
端的に言うと押し心地は重く、いわゆるカム式クロノグラフに近い押し心地です。
と言うのも、カム式とコラムホイールの押し心地の差は機構による差異と捕らえられがちですが、実際のところはメーカー側の設計思想による押し心地の設定の差異と言った方が正しいのです。
設計上はコラムホイールでも固い操作感に出来ますし、カム式でも軽い押し心地にすることが可能です。言い換えれば9T82は敢えて重くしているのです。
恐らくクロノグラフ機構の消費電力量が大きいため誤動作防止の意味合いが大きいと思われます。9T82のクロノグラフ動作時の消費電力は停止時の11倍にも達する事を考えれば納得できるかと思います。
ボタンは大きいが堅いため誤作動はしにくい

ボタンは大きいが堅いため誤作動はしにくい



まとめ

残念ながら廃盤となって久しいですが、当時のセイコーエプソンの技術の粋を集めた高級機はクォーツクロノグラフの中で特筆すべき個性を持っている機体だと思います。
ですがあまりにもムーブメントにコストがかかりすぎたため、ケースやブレスレットの造りが少々犠牲になったモデルが多いのもまた事実です。
セイコーはこの反省を生かし、手の込んだムーブメントに手の込んだ外装を用意するようになりました。スプリングドライブクロノグラフです。
GSスプリングドライブクロノグラフ

GSスプリングドライブクロノグラフ

実は9T82とスプリングドライブクロノグラフの設計者は同じ方です。時期的にもスプリングドライブクロノグラフ登場と時を同じくして9T82が廃盤となっており、エプソン製クロノグラフのフラッグシップが異端の「9」からGSの「9」へと引き継がれたと言えるでしょう。

関連商品

798,000 
大黒屋 ブランド館 徳島藍住店 (インボイス対応)
極美品
230,000 
上がり時計2021
生産終了モデル
199,800 
シンシアウォッチ
未使用品
572,000 
AGAIN (インボイス対応)
228,000 
大黒屋ブランド館 梅田店 (インボイス対応)
大人気モデル

関連するみんなの投稿

ZENMAIのココ東京
小振りな37mmブレスレット仕様が復活ですね!

グランドセイコー SBGW305
1
177日前
トケマー管理部門(宣伝アカウント)
5/5までの出品
グランドセイコー
SBGW253 白文字盤 1960本限定モデル 手巻き 中古品
【トケマー宅配出品(出品代行)】 20230405
800,000 円
5
379日前
ZENMAIのココ東京
ラストチャンス?
グランドセイコー メカニカルハイビート36000 銀座限定2022モデル
770,000円
お一人さま1点限り

申し込み: 7月13日~ 8月2日
購入場所: 銀座三越 本館1階 ザ・ステージ
ご購入期間までにエムアイカードのご準備をお願いいたします。
8
2
661日前
ZENMAIのココ東京
人気モデル グランドセイコー 白樺のブラックバージョン

SLGH017
Evolution 9 Collection
1,210,000 円(税込)
2022年8月発売予定
7
667日前
かいりきあき
8T63-00K0
シン・ウルトラマン リミテッドエディションウォッチ
大真面目です
まだ見かけた事はありません
7
670日前
ミリオネア
セイコー
オレンジモンスター ダイバー
7S26-0350
海外向けに製造された商品。モンスターの由来は頑丈でタフさが特徴の為です✨
梅雨も明け、オレンジ色の文字盤が熱い太陽とマッチして、この夏ピッタリの一本です。視認性も高い!
5
676日前

関連記事

【プアマンズGS】セイコーメカニカルの定番モデル「SARB033」をレビュー <時計怪獣 WatchMonster 2017/8 掲載記事>
2017/8/30 くろ ロングセラーモデルとして国内外問わず根強く支持されているセイコーメカニカル「SARB033」。安価な割に堅実な造りから「プアマンズGS(グランドセイコー)」とも呼ばれる人気モデルを手に入れたのでレビューしてみます。

【腕時計レビュー】グランドセイコー 創業140周年記念限定モデル エボリューション 9 コレクション SLGA007 <2022/6 掲載記事>
2022/6/3 こふ 1582文字 日本を代表する高級時計メーカー グランドセイコー(Grand Seiko) 。 今回は2021年発表モデル「創業140周年記念限定モデル SLGA007」を実際手に取る機会がございましたので、実機レビューをしてまいりたいと思います。

【新入社員向き】サラリーマンにおすすめな腕時計ベスト3 <時計怪獣 WatchMonster 2017/3 掲載記事>
2017/3/23 MARUKOME もうすぐ4月になりますが、新入社員の皆さんは腕時計をお持ちでしょうか?まだ購入してない方向けに今回はおすすめの3本をご紹介致します。

グランドセイコーのチタンが欲しい ステンレススチールとどちらがいいのかを検証してみた <時計怪獣 WatchMonster 2017/3 掲載記事>
2017/3/6 Black monster 時計の素材は年々と増えていきます。ステンレススチールからプラチナまで。今日はその中でも、日の目があたることが少ないチタンに注目していきます。

いい大人のテーマパーク、 セイコーミュージアムに行ってきた!体験レビュー <時計怪獣 WatchMonster 2017/4 掲載記事>
2017/4/8 Loosegear 聖地セイコーミュージアムを実際に体験してきました。今回はアクセス方法や駐車場などの詳細も含めて記載します。 所蔵の展示品、収蔵品が非常に素晴らしかった!セイコーの歴史を感じ、腕時計がさらに好きになったかも。

【トケマー厳選】個性派揃いのグランドセイコー おすすめ5選 <時計怪獣 WatchMonster 2019/1 掲載記事>
2019/1/15 サウスポー 日本が世界に誇るトップメーカー"グランドセイコー"。今回はトケマー出品中のおすすめ5本をご紹介してまいります。