特にステンレススチールのスポーツ系モデルとなると、発売された時点でお店によっては定価を上回っていることも少なくない。
自動巻きモデルが発売されてから、常にプレミアム価格のついた状態のデイトナは別格として、ここ10年くらいで一番話題になったのは2007年。まさかの復活を遂げたミルガウスだと思う。
私の個人的な話になるが、自分の中では、ロレックスはもう買うことはないだろうと思っていた。ただ、まさかこんなモデルが発売されようとは。
ミルガウスGVの画像を初めてみたとき、完全に一目惚れをしてしまったのだ。これはもはや言葉では表現できないが、とにかく完全にやられてしまったのである。
バーゼルで発表された時、画像をみるや、嫁に
「これは買う、絶対に買う。誰が何と言おうが買う。」
と宣言したのを覚えている。
こんな高額の時計を簡単に買う余裕などなかった我が家ではあるが、私の様子から本気度を悟った嫁からは、ありがたいことに反対の言葉は一切なかった。見た瞬間に購入を決めたのは後にも先にもこのミルガウスだけである。
すぐさま、日ごろからお世話になっていた某正規店に行き、何とか予約をしたい旨伝えると誰よりも優先的にとは言えないが、予約は受け付けるとの返事をもらうことができた。
その後、しばらくして、GVは無理だけど、初回に日本へ入ってきたホワイトモデルならお渡しすることができますとの連絡をいただき、当初は「売ればいいか」くらいのつもりでとりあえず白いのを買うことにした。
2007年の秋ごろだっただろうか。もう、そんなに時が流れていることに驚かされる。
私の記憶では方々に電話した結果、白でも買い取り価格の最高が当時110万円を少し上回るくらいだった。
何と言っても日本にはまだ正規で30本もなかった時だったらしく、プレミアム感が半端ない。
当時白の定価が68万円くらいだったので、右から左に流すだけで実に40万円以上儲かるわけである。こんなおいしい話はない。まさにロレックス恐るべしである。
いくつかのお店に目星をつけて嫁と高速を飛ばして名古屋へ。
「すごいですね、実物を初めて見ました。」
なんてことを店員さんに言われながら、電話で問い合わせ済みの価格でオッケーということになりはしたのだが、そこまでしたけど・・・・
結果的には、私には売ることができなかった。
なんというか、理由は大きく二つあり、一つはせっかくお店の方が当時は数の少ない貴重な入荷分を自分に用意してくれ、それをそんな風に扱いたくなかった。
もう一つは白も思いのほか魅力的で、普通に気に入ってしまったということの両方の思いがあった。
ロレックスを売ってお金を儲けるというのが悪いこととは全く思わない。
けれど、でもこのミルガウスに限っては、なんとなく自分の中の時計倫理としてストップがかかったのである。
結局この白ミルガウスは手放されることなく、今でも一番使用頻度の高い私の日常時計となっているが、それはそれで不思議なものだ。
ガンガン使えて丈夫だし真似はしない方がいいが、風呂やシャワーも平気である。
そんな白ミルガウスもとうとう公式ホームページからはその姿を消しディスコンとの噂である。今後どうなるのか分からないが、おそらく今後も手放すことはないだろう。
さて、ここで気になるのは、予約したままになっていたGV。
当初は200万円近いとんでもないプレミアム価格までいったミルガウスGVであるが、それなりに流通し、数が増えてくると市場の原理で値段も落ちてくる。
ある程度市場にも出回り、価格もだいぶ落ちてきた頃に、一本の電話が鳴った。
「予約されていたGVなんですけど、白を買われたのでどうかとは思いましたが、入荷したので一応連絡させていただきます。」
いや、白を買ったのだから、もうGVはないでしょ。色違いで同じモデルを買うなんて、そんなバカそうはいないでしょ・・・
なんて、常識的な思考は持ち合わせていないので、GVももちろん買いましたよ。だって、もともと欲しかったのは、一目惚れしたのはGVなのだから当然の流れかなと。
まぁ、家計的にはかなり無理したと思うけど、もはや病気なのだから仕方がないのである。なんといってもGVはかっこいいのだ。それまでに色々な時計を長年見てきて、自分なりにかっこいい時計の基準みたいなものが出来上がったうえで、これは堪らんと思ったモデルである。
誰になんと言われようが、かっこいいのだ。
同じように感じていた人はもちろんいたとは思うけど、GVを初めて見たときに絶対にすごいことになるだろうと思っていた。当分はさすがに買えないだろうなと。
ただ当時のネットの記事とかを見ていても、かなり特殊な時計だからプレミアム価格なんてつかないだろうし、誰がこんなの欲しがるの?といったものも少なからずあったにはあった。
結局ふたを開けてみれば特にGVなんてものすごいプレミアがついていて、とても普通に買える状態ではなかった。
あれからもう約10年、時が経つのは早いものである。
白の満足度があまりにも高く、結局GVは保護シールもそのままの買ってきた状態、まさに塩漬けである。どうしたものやら・・・。
ロレックスの新作が発売されるとなると、プレミアム価格がつくことも少なくない。モデルチェンジならともかく、ミルガウスは復刻版とはいえ、長らくラインナップから外れていたモデルの復刻であり、ステンレススチールモデルのみの発売である。
ゴールドのモデルで新作が発表されても、正直、庶民にはなかなか買うことはできない。だが、ステンレスモデルは、定価だと100万円は超えることは、そうそうないだろうから(いや、最近はあるかな)、定価あたりだと何とかなる人もいるのではないだろうか。また、並行物だと、もう少し安くなることも多いだろう。
ただ、少し前までは、40万円も出せば、通常のラインナップのスポーツモデルも結構、買えるモデルも多かったのに、最近は時計が高くなったものである。いったいどこまで値段があがるのだろうか・・・。