生産終了後も高値で推移する王者デイトナ
2016年の秋頃からRef.16520の実勢価格が高騰しています。
具体的には、16年前半までは、製造数が多いノーマル仕様の相場が130~140万円程度程度であったのに対して、17年8月の時点においてはなんと200万円以上まで跳ね上がっているのです。
さらに、レア仕様について言えばこれ以上に高騰しています。

Ref.16520
名機エル・プリメロベースのムーヴメントを搭載
デイトナ初の自動巻きモデルである16520は、名機エル・プリメロベースのムーヴメントを搭載しているという点で、時計ファンの心を掴み発売当時から根強い人気を誇っていました。
一時は正規店で購入しようとすれば、年単位の予約待ちという状況も珍しくなく、並行市場においてはプレミアム価格で流通していました。
そして生産終了後もその人気は衰えていません。つまり、これまでも比較的高値で推移していたモデルなのです。

Ref.16520
なぜこのタイミングだったのか?
年を経ると市場在庫が少なくなり、相場も高騰していくというのは、ロレックスに限っては比較的に自然な流れといえます。
しかし、今回のケースはあまりにも唐突で、しかもなぜこのタイミングだったのか、という点に疑問を感じる人は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、その謎に少しでも迫っていきたいと思います。
相場が高騰するきっかけとなるパターン①
ひとつは、リニューアルなどで「生産終了」となるケースがあります。
ロレックスのスポーツモデルに限っては、USED、アンティーク市場においても非常に人気が高いため、生産終了後、相場が値上がりするケースは決して珍しくありません。
ただ、16520が生産終了となったのは15年以上前のことなので、今回のケースに当てはめるには無理があるでしょう。
相場が高騰するきっかけとなるパターン②
もうひとつのパターンが、アニバーサリーを迎え、市場人気が再燃するケースです。
デイトナが誕生50周年を迎えた13年には、これを記念してクリスティーズで大々的な「デイトナ」オークションが開催されるなどして、大きな盛り上がりを見せました。
実際これを機に、4桁レファレンスの手巻きデイトナを中心に相場が上がりました。
16520も手巻きデイトナほどではありませんが、相場が20万円ほど底上げされました。また一方で、当時の現行品であったスチールベゼルの116520も、日本市場では定価改定や円安進行といった影響を受けて実勢相場が右肩上がりでした。
現行品が値上がりすれば、これに牽引されてUSED品や生産終了品の価格も引き上げられます。

Ref.116520

Ref.116520
新型デイトナ116500LNを発表
さらに決定的だったのは、16年に新型デイトナ116500LNが発表されたことでしょう。時をそれほど空けずに、再びデイトナにスポットが当たったのです。以下で16520の発表から、相場の変動をまとめてみました。

Ref.116500LN

Ref.116500LN
Ref.16520の相場の変動
ここでは、デイトナRef.16520の発表から今日にいたるまでの約30年間で起きたトピックスと、それぞれの時代における販売価格を記します。
発表当時、国内定価50万円だったデイトナが、現在の200万円以上という実勢相場にまで高騰した背景にはどういった出来事が影響していたのか、改めて確認したいと思います。
1988年
デイトナ初の自動巻きモデルであるRef.16520を発表。エル・プリメロをベースにしたハイビートのCal.4030を搭載。
当時の国内参考定価/50万円(税抜)
2000年
デイトナがRef.116520にモデルチェンジ。これに伴い16520が生産終了。
生産終了時の国内参考定価/68万円(税抜) 実勢相場/80万円
2002~05年
2006年
2007年
円安進行による現行品の高騰、アジア市場の需要増加といった影響で相場が高騰する。
当時の実勢相場/160万円
2008年
2009年
2010~12年
2013年
デイトナ誕生50周年を機に歴代モデルが再注目され、相場が再び上昇傾向になる。
当時の実勢相場/110万円
2014年
2015年
2016年
セラクロムベゼルを装備したRef.116500LN発表。これに伴い116520が生産終了。
当時の実勢相場/120万円
2017年
2016年秋頃からRef.16520の相場が高騰。
現在の実勢相場/200万円~
16520についてささやかれるウワサ
ここ数年はデイトナに注目が集まっており、実勢相場が値上がりしても不思議ではない状況であったことは確かですが、今回のケースはあまりにも唐突で、しかも短期間で相場が跳ね上がっています。この理由について、次のように分析している業界関係者もいるそうです。
「2016年の夏頃から、16520の流通が極端に減っており、仕入れが難しい状況です。とくにレア仕様のモデルはほとんど流通がストップしているような状況です。
こうなると、仮に入荷できたとしても販売価格は高くせざるを得ません。あまりにも急に流通が減ったことから、だれかしらが買い占めを行っているのでは?そんな噂もささやかれているほどです。」
まとめ 過去にも同じようなことがあった
買い占めについては、「あくまで噂レベル」と言いますが、実際、過去に同じようなことがありました。
1988年、発売されたばかりの16520が、ブームとなったイタリア市場で買い占められました。世界的にも注目を集めていたモデルだけに、需要と供給のバランスは崩れ、一般市場に流通した数少ない個体は定価を上回る価格で販売されたと言います。
おそらく現行品のレギュラーモデルでプレミアム価格が付いた最初の腕時計が16520だったのではないでしょうか。ともあれ、今回の噂も、前例があるだけに一笑に付することはできません。
「レア仕様の流通がほとんどない」という点もこの説を後押ししています。手巻きデイトナをみてもわかるとおり、レア仕様の場合、オークションなどでときに想像を超える高値が付けられることがあります。
そのため利益率の高いレア仕様を中心に買い占められているとも考えられます。さらに高騰のタイミングが急だったのも買い占めが一気に行われたとすれば説明がつきます。
これらを踏まえると、「買い占め説」が現実味を帯びてきます。