今年もスイス
開幕いたしました。
各社こぞって新作を発表している訳ですがその中でもやはり注目されるのはロレックスです
ね。
私が今回のロレックスの新作の中で最も注目しているのは
「デイトジャスト41 Ref.126333」です。
理由としては外装の変化では無く、ロレックスの画期的な新ムーブメントを積んだ腕時計が
一般モデルにも登場したという点です。
この新型デイトジャスト41に搭載されているcal.3255は実は昨年バーゼルワールドにて発表されていた機械なのです。
昨年から出ていたにも関わらずcal.3255が搭載されていたのはパールマスター39と呼ばれる金無垢ケースにサファイアを散りばめた数百万円の腕時計のみだったためその認知度は低いままでした。
しかし今回はその新ムーブメントが新型デイトジャストにも採用されるということ
でやっとロレックスの新機構が身近なものになりそうです。
やはりロレックスに新機構が搭載されるのはデイデイト→デイトジャスト→スポーツ
ラインの順番の様ですね。
ではどんな部分が進化しているのか見てみる事にしてみます。
まずこのムーブメントが従来品と違うところで言えば
・パワーリザーブが70時間(およそ3days)にパワーアップ
・オーバーホール期間の延長
この2点が特筆すべき点かと思います。
そしてその進化の立役者がこのパーツです。
クロナジーエスケープメントと呼ばれています。平たく言うと新型の脱進器です。
何をしているパーツかといいますと、香箱から送られてくるゼンマイによる駆動エ
ネルギーをテンプの振り子運動に変換するパーツです。
ではなぜこのパーツがキモなのか?
それはこのパーツが機械式腕時計の中で最も動く回数の多い部分であるからです。
左側が従来のデイトジャストの脱進機、右側がcal.3255の脱進機です。
簡単に言うと腕時計の中の「要肝心」のパーツがこの脱進器(ガンギ車とアンクル
)
でありムーブメントの性能に甚大な影響を与えるのです。
このパーツを詳しく見ていくと従来品に比べてガンギ車自体が肉抜きによる軽量化
が施されていること、アンクルの爪石とガンギ車の接地面積が少なくなるようにガ
ンギ車の歯車の先端部分が特殊な構造になっていることがわかります。
アンクル自体も従来品に比べて少し歪な形状をしていることも見受けられますね。
まずガンギ車自体を軽くすること、アンクル部分の爪石を細くすることで脱進器が
動くためのエネルギーを節約しています。単純に人間で例えると5kgの重りを抱え
て走るより2kgの重りを抱えて走る方が早く走れますし、長時間走ることが可能で
す。
腕時計も同じで動かすパーツが軽ければ軽いほどゼンマイのパワーを省エネしなが
ら動かす事ができます。
この改良がパワーリザーブの延長に繋がっている訳です。
脱進機の大幅な進化にあわせて時計の動力の大元である香箱(一番車)も進化しております。
香箱の外壁を薄くする事により収納するゼンマイの全長を長くする事に成功。これにより脱進機と併せてパワーリザーブの延長に寄与している。
先ほどの脱進機といいこの香箱といい腕時計を動かす為の輪列部分を徹底的に見直している。
先代デイトジャストのcal.3135もおおよそ100パーツ超えの構成機械でありながら高精度で故障も少ない堅牢なムーブメントとして知られていたが、そこから得たノウハウを糧に徹底的にムーブメントを見つめなおして作り直したのがこのcal.3255である。
まさに飽くなきロレックスの探求心の表れと言えるでしょう。
そしてこれも新世代ムーブメントの新常識になりつつあるが、カレンダー機構も進化している。
機械式腕時計ではご法度とされる深夜時間帯でのカレンダー変更行為。
腕時計販売店では「腕時計の時刻が夜9時から深夜の3時を指している時はカレンダー表示を操作しないで下さい。」と説明する場合がほとんどである。
これは世界で爆発的に普及しているヴァルジュー7750ムーブメントをはじめとする通称ETAムーブメントトが深夜時間帯にカレンダーを操作する事でカレンダー機構の爪送りパーツを損傷する為に禁則事項として一般ユーザーに伝えられるのですが、
126333 デイトジャスト41はカレンダーをどの時間帯に操作しても大丈夫なようにムーブメントが再設計されております。
まさにあらゆるパーツが次世代ムーブメントとして進化を遂げている訳です。
今年のバーゼルワールドではデイトナのモデルチェンジばかりが話題に上がっていますが個人的には最も進化した腕時計は126333デイトジャスト41だと思います。
これからのロレックスを支える新ムーブメントcal.3255が本格始動した事により「腕時計メーカー」としてのロレックスの飛躍が見られるのではないかと思います。