ロレックス正規販売店で身分証明書確認が必要になったことから
専門的な目線で腕時計を紹介、日本で最も幅広く時計を記事にしている紙媒体の「クロノス日本版」も私もよく立ち読み(買えよ!だって高いんだもん)している雑誌です。その雑誌の編集長が広田氏で私も彼のIWCに関する記事から感銘を受けてから僕は氏のSNSをよく見るようになっています。
業界では「ハカセ」と呼ばれ知識も豊富な彼はSNSでも気軽に話してくれるキャラクターです。私も読んでいますというコメントにわざわざコメント返しをくれるほど気さくな人でもあります。
そんな彼がTwitter上で発言したロレックス に関するツイートに僕は衝撃を受けました。広田氏はさまざまな他のメディアでもロレックス に関する優れた点を彼の目線で記事を書いていたのです。決してロレックスを否定していた訳ではありません。ただ間違いなくロレックスの身分証明書付き販売に関することが彼の「ロレックス発言中止」の理由だと考えられます。
まず2019年11月になってから(というかSNS上では10月頃からそんな噂があった気が?)時計系のニュースで正式に見かけるようになりました。さてしかしこれはあくまでロレックスを正規販売する20の会社の自主取り組みと書いていることが特徴です。
日本ロレックスはこの件には関係していないと報道されています。しかし、この自主取り組みを日本ロレックスは了承済みだそうです。本当に関係していないのか多いに疑問が残ります。
ロレックス 正規販売店で身分証明書提示は妥当か否か?
さてトケマーでの販売相場を見てみましょう。ロレックス サブマリーナー デイト 116610LV通称『ハルク』の価格はだいぶ落ち着いた感じがします。トケマーでの2019年11月時点で上のモデルの販売額は約159万円です。かつては200万近い印象があったこの人気モデル160万円を切っています。
そんな中古相場が落ち着いたこの時期に発表されたこの自主取り組み、僕の感想は時期外れの印象が拭えません。しかしまるで社会主義的な身分証明書確認のよる販売方法導入は相当慎重に議論したため、今日まで時間を要したというのが本当のところでしょう。
その間、転売を専門にしているディーラーの一部はこの正規店の動きを事前に察していた可能性があります。当然転売ビジネスの最前線にいる人たちはロレックスに関する情報を入手するスピードも一般人と比較して早いはずです。
仕入れができなくなれば旨味は無くなりビジネスとして成立しません。またこの所の世界同時の「ロレックス・バブル崩壊」もあり一気にマーケットの価格が落ちた印象です。先月まで在庫を処分してこのビジネスから手を引いた可能性もあります。
この正規店での身分証明書確認でニュースソースによると、正規販売店ネットワークで情報をシェアして、購入制限対象のモデルでは5年また1年間の再購入ができなくなるシステムです。購入前に「審査」を行い、それにパスした人だけ購入できるシステムになります。
このシステムに関しては賛否両論あり僕も初めて聞いたときは「時代錯誤」という印象を受けたものです。しかし現場の販売員さん達から「何らかの販売制限が必要」との声もネット上では見かけています。販売の最前線は相当過酷な状態なのだろう、と思いました。
店頭で販売しているスタッフのストレス軽減を考えるならば身分証明書確認は必要でしょう。そして、ロレックスの経営陣は早急にこの歪んだロレックスマーケットを是正すべきです。
例えばパテックのように自ら中古市場に参入することも良いと思います。新品相場の安定プラス、中古部品の確保することも可能です。ロレックスの中古市場参入は同社にとっても多くのメリットが生まれます。
そもそもロレックス 正規販売店の世界はギルド状態
そもそもロレックスの日本正規販売ネットワークは限られた老舗代理店が独占的に握っている極めて閉鎖的な販売網です。人気ある商品にも関わらず、正規店の数は減っています。
私も業界に居ないため、詳しいことはわかりませんが、20年間でロレックス正規店代理店の数はかなり減っています。新規参入の販売店はありません。これを中世ヨーロッパのギルドに近い状態と表現する人もいます。
現在のネットワークが業界再編なのか、正規代理店から脱退した店側の都合なのか、日本ロレックスの意向かは不明です。また並行店として長年営業してきた店を正規代理店として招聘していることもありません。今後のロレックス販売の発展を考えるならば、日本ロレックスは彼らを積極的に加盟させるべきです。
ただ老舗正規代理店と各国ロレックスとの癒着(こんな言葉は適切か迷うのですが・・・・)はハンスウィルスドルフ時代からの「ロレックス負の遺産」と僕は思います。毎回僕の記事で書いていることですが、なぜ直営店を早く開設しないのか疑問は増すばかりです。
ロレックスにミステリアスさはもう不要
これからのロレックスに求められることは情報開示です。それにより不透明な流通網を世界規模で改革すべきです。この時代にミステリアスさは相応しくありません。
ハンスウィルスドルフが遺したロレックスのミステリアスさは魅力であったことも事実です。しかし21世紀の情報化社会にあってはそれ自体時代錯誤と言われても否定はできません。
しかしロレックス経営陣にとっては“負の遺産”を是正することは同社にとって、リスクが大きいことも事実です。“負の遺産”はロレックスにとってのパンドラの箱でもあります。
広田氏がツイートした「政治的理由」は色々なことが考えられます。ロレックスのことを考え自身の時計ライターの本業に外れると判断した可能性も考えられます。
いずれにしても、身分証明書確認は現時点だけ見れば正常な状態でないことは確かです。しかしなんらかのきっかけになって欲しい、広田氏はそう考えたのでは無いでしょうか?
今回の身分証確認が、本当にロレックスの時計を欲しく楽しみたい人にとって最善の改革へ導いて欲しいと僕は切に望みます。