
2018年4月のスイス時計の輸出は楽観視できない上昇傾向
導入文にある、FH発表データーではスイス時計の輸出は緩やかな上昇傾向にあります。昨年のアメリカと香港向けの大幅な輸出減少からは回復傾向にあります。
しかしこの成長は落ち込んだ後の成長であり、まだ楽観できない成長です。
具体的な数字では輸出総計では個数で
2016年:25,396,250個→2017年:24,305,272個
対前年比で4%減少しています。
輸出総額では
2016年:18,257(100万CHF)→2017年:18,792(100万CHF)と微増です。
注:CHF=スイスフラン 1CHF=約¥110
スイス時計協会はPDFで2012年からの統計を掲載しています。
2012年との比較では個数で4.3%の減少、取引額で2.9%の微増となっています。
つまり「落ち込みが戻った」ための成長であり、長期的には『横ばい状態』なのです。
Rolexの戦略に疑問
厳しい時計業界のマーケットでの苦戦は消費者の求める要求が過去よりも高まっている事もあるはずです。
そして個人的にRolexの戦略にも疑問が感じます。
その問題点の第一は私が何度か記事で書いている【価格】が高いことです。それはスイス時計協会(FH)の統計からも見えてきます。
スイス時計協会のデータにある時計の価格分類では4つに分けられています。
①200CHF(スイスフラン)以下、②200〜500CHF、③500〜3000CHF、④3000CHFです。
スイスフランは1CHF=¥110安価な①で¥22000、一番高価な330000です。
上のInstagram、オイスターパーペチュアル34の新品価格が大阪市内の某Rolex専門店で¥458,000でした。
現行品のRolexでは最も低い価格と思われます。
スイス時計協会のカテゴリーでもRolexは一番価格帯が高いモデル、④の3000CHF以上のモデルしか販売していない事がわかります。
日本の物価上昇とかけ離れていくRolex
20年前私が初めて購入したRolexのAir-Kingは¥310,000、これを当時31歳の私は36回分割無利子で手に入れています。
当時はまだ安い価格のRolexモデルが存在していました。
しかし2018年の現行品ではこれがオイスターパーペチュアル34が最安値のRolexで、20年前の最安値で無いRolex、Air-Kingと単純比較すると、48%購入価格で上昇しています。
さて、賃金の伸び悩みが言われている日本経済ですが、政府や日銀は景気は上昇傾向とメディアでよく発表しています。
しかし、男性の大卒初任給を比較すると厚生労働省の統計から平成9年度で¥193,000、平成29年度で¥207,800と僅か7%しか上がっていません。
そしてRolex販売価格は48%上昇と実勢とかけ離れた価格設定となっています。
つまり、平均的な大卒者がRolexを購入する事は20年前よりハードルが上がっていると統計からもわかります。
ライバル会社の戦略は?
Rolexのライバル、例えばオメガの価格帯はどうでしょう?
オメガ現行品、スピードマスタームーンウォッチプロフェッショナル42MMは2018年6月の価格帯が¥351,980からでした。
自動巻きの機械式時計で、コーアクシャル搭載の主力モデルでこの価格はリーズナブルと言えます。
風防がプラスティック製という部分に難をあげる方も居るかもしれません。
しかし仮にこれがサファイアクリスタルに替えても価格が45万に上がるとは考えられません。
クロノグラフ機能が付いての価格であり、Rolexと比較するとデイトナは150万オーバーで価格をかなり抑えている事がわかります。
揺らぐ耐久性での優位
その他でもRolexが優位性を保っていた耐久性にも陰りが感じられます。
20年前は防水性はRolexが全てのモデルで優位性を誇っていました。
しかし今は各社ケースの密閉度をあげていて、Rolexよりも現実的な機能に留めています。
上のスピードマスターは5気圧防水、ダイバーズウォッチで無い事を考えると日常生活では問題ありません。
そして何よりショッキングな事はオメガのマスタークロノメーターの出現です。
2013年に発表されたこの脅威の15000ガウスの耐磁性はRolexのミルガウスを完全に凌駕しています。
ミルガウスの耐磁性は1000ガウスとHPで書かれています。オメガのマスタークロノメーターの10分の1です。
Rolexの進むべき道は?
これは僕の個人的な意見になりますが、まず価格の見直しを考える事でしょう。
エントリーモデルのオイスターパーペチュアルやAIR−KINGの販売価格は絶対に下げるべきです。
エントリーモデルを充実させる事は時計ブランドにとっても将来への投資となります。
多くのRolexファンは若い頃にこれらのエントリーモデルを苦労して購入、その後にGMTマスターやデイトナにステップアップしていきます。
また耐久性の向上もマストです。当然耐久性の向上による価格のアップは最小限に抑えるべきでしょう。
「さすがRolex」と言える様な耐久性のある時計をこれから開発していかないとファンは離れていきます。
トケマーでRolexに人気ある理由はデザインと耐久性があげられます。
数々の優れた防水機能がこのブランドの信頼を高めた要因です。
ライバル社オメガの優れた耐久性を持ったモデルがこれからRolexの人気をおびやかす事につながる可能性もあります。
Rolexにはこれから、オメガに負けない耐久性を持ったニューモデルをなるべく早くリリースして欲しいですね。